「自分に足りないのは基礎だ!」と感じた方!よい練習メニューはないかと探していませんか?
今回は、クラシックギタリストのための伝統的な基礎練習を紹介しましょう!
記事の後半で、クラシックギターの基礎練習について、すこし突っ込んで解説していきます。
スケール練習
一つ目は、スケール(音階)練習です!
クラシック音楽の器楽演奏、たとえばピアノやヴァイオリンの世界では、伝統的にスケール練習が大事な基礎としてみなされてきました。
20世紀半ば、その流れを受けて「ギターの神様」こと、A.セゴビア(1893-1987)が監修したスケール練習が以下のものです。

24調全部のスケールが、左手の運指番号付きで出てきます。A.セゴビアがどのような左手の使い方を選んだのかを学ぶ意味でも、とても興味深い内容になっています。
そえられた序文で、A.セゴビアは「ギターの教材は十分に足りてないので、そこを補いたい」(“it is our duty to try to fill this lack”. 原文ママ)と述べていて、スケール練習の大きな効果について主張しています。
アルペジオ練習
二つ目は、アルペジオ(分散和音)練習です!
アルペジオとは、和音を一つ一つの音にわけて鳴らすテクニックで、ギター曲にはたくさんでてきます。
これもクラシックギターの重要な基礎テクニックとされていて、どの教本にも必ずアルペジオの練習が載っていると思います。
アルペジオの練習は、M.ジュリアーニ(1781-1829)のものが大変有名で、考えられるほぼ全てのパターン(120種類!)がエクササイズとしてまとめられています。

以下は、120のアルペジオ練習が日本語解説付きで載っており、さらに他の有益なエチュードだったり、練習メニューもたくさんあるのでおすすめの教則本です。アメリカでとても有名な本です。

アルペジオの練習は、右手の練習とされる向きがあり、左手は弦をおさえなかったり、おさえたとしてもとてもシンプルな場合が多いです。
M.ジュリアーニのアルペジオ練習も、左手はCコードとGコードをひたすら繰り返すというものになっています。
さて、他には?と言うと・・・実は、これだけで十分です!
もちろん、クラシックギターの基礎練習として紹介できるものは他にもありますが、わたしは上記の2つ(三冊)以外に、特別なものは必要ないと考えています。
一般的なギター教本一冊あれば、全ての基礎については理解できますし、逆にそれ以上マニアックに基礎練習を追求するのは弊害の方が大きいです。
なぜなら、基礎練習そのものが目的になってしまうとよくないからです。
基礎練習の目的
基礎練習をする目的はなんでしょう?
それは弾きたい曲を上手に弾けるようになるためですよね!
これを忘れないようにしておきましょう!
実は、基礎練習のための基礎練習ってのがあるんです。これには意味がありません。
考えなしに基礎練習をしても、基礎練習そのもの、つまり単純なスケールやアルペジオが上手くなるだけです。
なぜそんなことに陥ってしまうかと言うと、「なんとなくテクニックの限界を感じるので、基礎練習して安心したい」という気持ちで取り掛かるからですね。
そうなると終いには、単純なスケールやアルペジオを弾くだけで楽しくなってきてしまいます。それはそれでアリと思うかも知れませんが、音楽は誰かに聴いてもらうことを前提とした方が良いです。自分だけが楽しくて、聴いている人は「??」となってしまう状態はマズイです。
そういうわけで、なんとなく基礎練習に取り掛かる前に考えてみましょう。
・弾きたい曲が弾けないのはなぜなのか?
・どこでミスしたり止まったりするのか?
・それはどんなテクニックが足りないからなのか?
・今やってる基礎練習にどんな効果を期待してるのか?
中級レベルぐらいまでは、ただ弾いていれば上手くなりますが、それ以上を目指すならば的を得た工夫が必要になってきます。
どんな基礎練習をやっても良いと思いますが、かならず練習の意図をはっきりさせて、目的を見失わないようにしましょう。
クラシックギターの特別さ
何を普通とするかにもよりますが、クラシックギターはかなり特別な楽器と言えます。
クラシック音楽の世界で、スケールやアルペジオの練習が基礎とされているのは、モーツァルトやベートーヴェンなどのいわゆるクラシック音楽の定番、基礎とされるようなレパートリーで、スケールやアルペジオが多用されているからなんです!
それなので、「ヴァイオリニストの帝王」こと、J.ハイフェッツ(1901-1987)はスケール練習を生徒に徹底させましたし、ベートーヴェンに憧れたC.チェルニー(1791-1857)の膨大な練習曲にはアルペジオがたくさん出てきます。
これらに代表される人達の方針は、今でもクラシック音楽の教育法に大きな影響力を持っています。
しかし、クラシックギターはどうでしょう?
共通したパターンのスケールやアルペジオが出てくることがあまりに少なくないでしょうか?曲ごとに、スケールもアルペジオもそれぞれ固有なものが求められます。
ドレミファソラシドと弾くにしても、和声によってありとあらゆる選択肢があり、パターン化するのはかなり難しいです。
これは近現代のレパートリーだけでなく、古典派などの音楽、たとえばF.ソルやM.ジュリアーニであってもその傾向があります。
前項でも言いましたが、基礎練習のパターンが体に染みついても、それが自分の弾きたい曲に活かされていないのであれば意味ありません。
基礎練習を信仰するのはやめよう!
実は、「特別な基礎練習はしない」という一流の演奏家は多いんです。
そういう人は、実際の曲から一部分を取り出して基礎練習に利用していたりします。色んな曲を演奏していくことで、自然とテクニックは向上するという考え方なんですね。
そして、本当に上手になりたいのであれば「基礎練習をするか、しないか」という視点よりも、もっと本質的な視点を持たなければいけません。
それについては別の記事:意味ある練習をしてる?【上手くなるための2つの原則!】で詳しく解説しています!
まとめです。
基礎練習は有益になり得ますが「曲を弾くために、自分に何が足りてないのか?」という分析が最初に必要です。
「基礎練習をしてたら自然に実力UP!」信仰を持たないように、基礎練習に取り組んでくださいね。
